キツネの神様の頼みごと その6

小谷家に訪問する日が訪れた。
今回は上手く話して、奥さまのほうから保険の契約を断わるように流れを持っていかなければ。
そのための策は入念に練ってきた。シュミレーションもばっちり。
加入していただくのも、お断りするのもスムーズに出来るのがプロ。

そう思いながら、いつものようにインターホンを押して、返事を待った。

するとどういうわけか奥さまはインターホン越しに
「申し訳ありませんが、保険の件はお断りします。」まるで追い返すかのような返事。

私のほうから断るつもりだったのが、あっさり先を越されて調子が狂った。
そうなるとバカな私。保険のプロ意識が邪魔をしたのか、

「もしかして断られる理由は、二階の息子さんに関係しているのではないですか。
断るように脅されたのではないですか」

つい口から出てしまった。

「えっ!!」驚かれる奥さまに
「先日ご訪問した折、二階の部屋からかなり不穏な気を感じました。
私は仕事柄いろんな方とお付き合いさせていただいております。
その道の方も存じ上げておりますので、ご相談に乗りますよ」

まさかその道の方が自分だとは言えないが、それでも何を言っているんだ!私はつくづくアホだ!

「いいえ!家は何もありません。どうぞお引き取り下さい」奥さまの声は動揺を隠しきれない様子。

断られたからいいものの、なんでそんなこと言ってしまったんだろう。このままいたら自分でも何を言い出すかわからない。
少々後ろめたさは残ったが、断られたのだからいいよね。
断られたことにほっとして、それ以上は何も言わず、そのまま引き返した。

私は祓いも一応は引き受けるが、私の場合は、呪術の力で無理やりはがすのではない。
憑いている方と話をして、説得して自ら成仏していただく。
生きている人達に対しての悩み相談と同じようなこと。
亡くなられている方も、生きている方も全く同じ。ただ違うのは、生きていないと経験が出来ないので、亡くなられている方は自分で解決が出来ないこと。
納得されたら意外と皆さん、穏やかに上に上がって行かれます。

しかし、今回は私の力の範疇から外れている。話が通じるような相手ではない。
キツネの神様もちゃんと能力別に人選をして頼まなければいけないよね。

あらためて、断られたことにほっとした。

しかし、事はそこで終わらなかった。
それから数日後、突然の奥さまからの電話。

「助けてください!殺される!」

えっ!!誰が。

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スピリチュアルカウンセラーYUMI