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キツネの神様の頼みごと その5
もののけに影響を受けるとまず考え方がおかしくなる。
周りからするとどう考えても常識からずれているようなことでも、本人はしごくまともに思っている。
いくらおかしいからといって一生懸命話しても、逆効果にしかならない。
正気に戻すには、もののけの正体を見つけ、引き離すしかない。
あの奥さまの話しぶりもどう考えても普通の理論からずれている。もののけの影響を受けているのは間違いない。
仕事がからんでいるのでしょうがない。次の日の夜、小谷家の近くに前もって偵察に行くことにした。
もののけは昼間は結界を張ってじっと潜んでいることが多い。日が落ちて夕方になると動き出す。
小谷家の近くで車を止め、昨日感じた二階の部屋のあたりに意識を飛ばした。
「わっ!やばい!」思わず声をあげてしまった。
真っ暗な闇を一段と濃くしたような邪気が渦を巻いている。
渦はどんどん周りの邪気を巻き込みながら、不気味な様相に変わってゆく。
これは、ご主人どころか奥さまの命も危ないかも。
さすがにどうしようと思っていると、
「うちの子狐が迷惑をかけて申し訳ない」
目の前に現れたのは先日の真っ白いキツネの神様。
「ちょっと!どこが子狐よ!
子狐なんて可愛いもんじゃない。巨大なばけものじゃない。」
あんなの相手にしてたら、私だって命がいくつあっても足りない。
明後日の訪問どうしよう。
「どうしても引き受けてはいただけませんか」キツネの神様はそれでもこりずに私に頼みかける。
「いや!無理!」
キツネの神様はため息をつきながら
「どうしてもだめですか。もしも気持ちが変わられたら呼んでくださいね。」残念そうにそう言って帰って行かれた。
あんな化け物相手に、この先気持ちが変わるわけが無い。
保険の仕事はどうにかして、奥さまが契約を断念されるように策を練ろう。
邪気を振り切るかのように車を走らせ家に戻った。
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