キツネの神様の頼みごと その4

奥さまはご主人に対してまるで怨むかのような口調で話されました。
時折やさしい顔を歪めながら話される内容は信じがたい内容でした。

最近建てられたばかりのお洒落なお家に広い庭。
ご主人は裁判官で高収入。
生活費として、毎月40万円以上のお金をご主人から受け取られている奥さま。
電気代その他はご主人の口座からの引き落としのため、毎月40万円といっても、ほとんどが食費と残りは奥さまの自由に使えるお金。
何に使ったかなんてご主人はまったく言われない。
普通に考えたら、奥さまはかなり幸せな方のはず。

実は奥さまの恨みの原因は別のところにあった。

毎月40万円を渡されるご主人の収入が月にいくらなのか。ボーナスがいくらあるのか。奥さまはまったくご存じないという。

結婚して30年お金は渡されるが、夫婦らしい会話がまったく無いらしい。

ご主人は家に帰ってくると直にお風呂に入り、奥さまが用意された食事をとる。
その間まったく会話は無く、食事の後は決まって奥さまに身体をマッサージさせる。

そしてたった一言「寝る」と言ってさっさと自分の部屋に直行。

毎日その繰り返し。

食事がまずいのか。おいしいのかそれすらも言わない。
一所懸命マッサージをしても顔色ひとつ変えない。

結婚当初はそれでもあの手この手で、ご主人から人間らしい感情を引き出そうと努力されたらしい。

しかし、そんな夫婦でも妊娠したと分かった時は、この子が主人を変えてくれるかもと奥さまは期待されました。

しかし、子供が生まれてもご主人は以前と代わることが無く、
結局奥さまは生まれてきた子供に愛を注ぐことで心の寂しさを埋めてその後を過ごされました。

しかし、その息子さんも成長してその後結婚。

しばらくすると子供も生まれました。しかしどうしても、息子をお嫁さんにとられたような寂しい気持ちを押さえられずに、このままでは息子を不幸にすると思い距離をおくことを決められたそうです。

しかし、そんな息子さんの結婚も暫くすると破局を向かえ、子供はお嫁さんが引き取るということで離婚が成立。
ショックを受けた息子さんは傷ついて、以来仕事もできず、部屋に引きこもっているとのこと。

それもこれもすべて主人の責任。一般的な夫としての姿を息子に見せてくれなかったために息子の幸せまでもぶち壊した。

「私も、息子も主人を怨んでいます。この恨みで主人は間違いなくもうすぐ死にます」
反論など受け付けないとばかりの強い口調。
しかし、生活はご主人の収入にかかっているので、保障がないと今の生活が維持できないとのこと。
ご主人が貯金されているのではという問いには、
「いいえ。何度聞いても主人は教えてくれません。もしまったく貯金がなかったら、私たちは生きて行けません。
私と息子が受けた仕打ちには10億あっても足りないくらいです」

奥さまはご自身ではかなり理論的だとおもって話しておられるようだが、かなりズレている。
どうも二階の部屋の結界の中に潜んだもののけに操られているようだ。
まずはいったん引き上げて策を講じたほうが無難のようだ。

奥さまには次回の訪問の約束を取り交わして、今日はひとまず失礼することにした。

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スピリチュアルカウンセラーYUMI